全国の獣医師に聞いた日本の高齢ペット(犬・猫)に関する調査(2)

  • 調査期間
  • 2008/08/04~2008/08/12
  • 調査対象
  • 全国の動物病院及び関連団体 4,704件対象(回収:307件)
  • 調査方法
  • FAX調査

調査結果の概要

(1より続く)高齢犬/猫の特徴として多くみられる病気・症状では、小・中型犬は「心疾患」「腫瘍」「口腔疾患」、大型犬は「骨関節炎」「心疾患」そして、「(※)衰弱=寝たきり」も見られ、小・中型犬に比べ、運動や動作に障害が生じるケースが多い事がわかった。高齢猫では「腎疾患」が最も多く、次いで「口腔疾患」「腫瘍」の順となった。ペットの高齢化に伴い、来院する飼い主の意識に変化があるかどうかを獣医に尋ねたところ、7割が「ある」72.4%と回答している。また、高齢犬/猫の飼い主に対して重視している指導では「食生活」58%が最も多く、2番目には「生活面」36%が挙げられている。

調査結果

1より続く
高齢犬/猫に関するエピソード(自由回答)
<高齢にもかかわらず元気/長生き>
2階から落下する事故にあった高齢犬を診察したが、無傷だった。
歯磨きをしていない23歳の猫に永久歯が数本残っていた。
22歳の猫の足腰が衰えず、セミを取れるほどの運動能力を維持していた。
殆んど寝たきりで痴呆症も発祥していた高齢犬がいたが、子犬を一緒に飼ったところ刺激になり、子犬の世話を焼くほど元気になった。
<回復力/治療の成果が高かった>
心臓の悪い13歳のミニチュアダックスが発作を起こして心停止になった。呼吸停止状態で来院したが救命処置によって生命が復活した。
18歳7ヶ月の猫が妊娠した状態で1週間行方不明になった。脱水症状や感染症などにより衰弱状態で見つかり処方を施したら、5日で回復した。
<飼い主との関係が強まっている>
高齢になると活動が鈍るものだが、飼い主が帰宅すると玄関まで行って毎日出迎える19歳の猫がいる。
食事と運動の管理ができている若くて健康な犬の場合、飼い主自身も若々しい。
散歩中に飼い主を不審者から守った犬がいる。
<飼い主の驚きエピソード>
飼い猫が別の猫といつの間にか入れ替わっていたが、それに気づかずに育てていたケースがあった。
高齢犬/猫の特徴として多くみられる病気・症状(n=307)
大型犬高齢猫
小・中型犬大型犬
1心疾患264腫瘍231腎疾患290
2腫瘍157骨関節炎207口腔疾患198
3口腔疾患111心疾患82腫瘍114
4白内障92(※)衰弱82内分泌疾患47
5認知機能障害58皮膚疾患47感染症47
ペットの高齢化を背景にして、来院する飼い主の傾向に変化が見られますか?
はい72.4%(n=302)
いいえ27.0%(n=302)
飼い主の変化について(自由回答)
<飼い主が治療・介護に熱心になってきた>
高齢でも治療を諦めずに何でもしてあげたいと望み、人間と同等の治療を望むケースが増えた。
ペットの介護が必要になった時、仕事を辞めて介護に専念する飼い主もいる。
<知識が豊富/ネットなどで勉強している>
インターネットを使って、予め病気についてよく調べて専門的な質問をしてくるようになった。
自分で調べて疑われる病気を自己診断してから来院するケースがある。
<食生活への気配り>
以前は飼い主の残飯を与える事もみられたが、今は専用のペットフードがかなり浸透している。
療法食を取り入れる飼い主が増えてきた。
<検査を望む/予防を心がけている飼い主>
高齢ペットを長生きさせるために、健康診断を積極的に受ける飼い主が増えてきた。
成犬時から先を見据えて、病気予防や健康管理に取り組むようになってきた。
<ペットの家族の絆の深まり>
家族としてペットをとらえ愛情を注ぐ傾向が強まっている。
室内犬の増加によりペットへの観察力が深まり関係性が深まっている。
<介護・認知症・終末医療の心配>
高齢のペットの足腰が弱まり、寝たきりになる事を心配している。
終末期は、病院で延命治療を行うより、最後は安らかに家で看取りたいという希望が増えた。
高齢犬/猫の飼い主に対して重視する指導(n=307) (単位:%)
具体的にどのような指導を行なっているか?(自由回答)
<食生活>
7歳頃からライフステージに合った適切なフードへ切り替える。
肥満に気をつけ、適正な食事量を守る。
おやつを控える/人間の食事を与えない。
病気の早期発見につながるので水分摂取量をよく観察する。
食べ慣れない食事はストレスになるので、できるだけ同じものを与える。
<生活面>
足腰が弱った場合や関節炎がある場合、室内の段差をなくしてバリアフリー化し、負担の少ない活動環境をつくる。
ケガ防止のために、滑りやすいフローリングを避ける。
歩く時や転んだ時の衝撃を和らげるために、床に敷物を用意する。
環境が変わるとストレスになるので、室内の模様替えをしない。
トイレに間に合わなくなる事もあるので、トイレの数を増やし、行きやすい場所に設置する。
<運動面>
散歩の際は、温度差による負担を軽減させるために、朝・夕など外気と室温の差が少ない時間帯を選ぶ。
散歩は疲れないように短時間に済ませ、犬のペースに合わせゆっくりと歩く。
自力で動きづらくなっても関節の屈伸運動などを手助けして、機能をできるだけ維持させる。
【参考】
高齢犬/猫の年齢を、人間の年齢に換算する計算式は以下の通り。
<3年目からの計算の仕方>
最初の2年で24歳、3年目からは1年に4歳づつ歳をとる。
小・中型犬/猫の計算式:24+{(犬の年齢-2)×4}
例)犬の年齢が9歳ならば、24+{(9-2)×4}=52歳
<2年目からの計算の仕方>
最初の1年で12歳、2年目からは1年に7歳づつ歳をとる。
大型犬の計算式:12+{(犬の年齢-1)×7}
例)犬の年齢が10歳ならば、12+{(10-1)×7}=75歳
調査実施先:日本ヒルズ・コルゲート(株)